私の脳の中には、たくさんの模様の断片が刻まれています。その記憶をいかに再定義することができるのかを問いとしてかかげてまいりました。薄れかけた模様の断片は事実もあり、創作もあり、新しいアイデアもあり、正確に繋ぎ合わせるのは容易ではありません。少年時代の脳に映る模様は私にとって恐怖として襲っていました。そのために自分の過去とどう向き合うのか、心の不安定な少年時代の脳に覆い尽くされた模様について研究するという付き合いがはじまりました。長い間避けていた脳に刻み込まれた恐怖模様を肯定的なものとするために、私秘的なアートとして制作して今に蘇らせようと思っています。　そういう課題をもってスタートしてすでに10年経ちました。脳から引き出された記憶模様は、さらに自己組織化した新しい世界となって私の前に描きだされてきます。　私の脳の中にあるたくさんの記憶模様の断片をいかにポジティブなものとして表示することができるのかを、創作の原動力として描いています。少年時代に体験した恐怖を解放することをねらいとし、技術、美学、思想などを組み合わせた記憶アートのような世界をめざしています。　作品について理解していただくことは困難な部分もありますが、美術に対する見方をひとつ変えることができる可能性もあります。作品を通じて皆さまが新たな視点を持って美術に触れることができましたら幸いです。これからも模様を積極的に私の特性として生成し活動していきたいと思っています。